コンドロイチン

俺は水戸の光圀、黄門だ。
この間旅からかえるとじじいがでてきてとうとうと口上をたれよった。
がまの油の口上みてーだっつうと本当にガマの油の野郎だった。
あんまりつまらん口上を垂れやがるんで
てやんでぇ男ならものを簡潔にいうもんだ、帰れ帰れというと、これをかってくれという。
なんだそれはというと、
霊験あらたかな西南の筑波山の麓の蛙からとったコンドロイチンだ、黄門様にぜひというから買ってやった。

コンドロイチンを飲んだ黄門様は若返ってしまいました。

それじゃあ伊勢参りにでもいくべと思い立って一人で出立した。
途中の宿じゃ朝になっても女将がおきねぇんでこっそり出てった。でてったんだが昼下がりに雨が降り出したんで途中の茶屋で休んだ。
野郎が追ってきて金を払えっていう。鈍そうな奴だったんでだまくらかして身ぐるみはいで、服は乞食にくれてやった。

大井川が増水していて渡れなかったから泳いで渡った。そんなやつみたことねえ、無茶だってんでカッとなってやったら流された。財布まで流されて文無しになった。

岸に行商がいたから話したらそいつも伊勢詣りじゃねーが伊勢にいくと言う。参道の店に納めるために伊勢にいくという。なんて野郎だ、伊勢にいったら参れよ信心が足らんと説教をしたら面食らった顔をしていた。
ともかく伊勢にいくなら俺もついていこうじゃねーかと言って車に飛び乗った。
なんだてめぇ降りろやいといいやがるから印籠を出そうと思ったら印籠まで流されていた。
馬の面倒をみるから連れてってくれと頼むと快諾してくれた。

伊勢に差し掛かると店のもんだっていうがたいのいい野郎どもが行商のところへやってきて、一緒にぞろぞろと連れ立って歩いた。
次の宿で酒をのんでどんちゃら歌って、寝た。
起きると野郎どもも行商もおらで、俺はすっぽんぽんになってた。
しまった、身ぐるみ持ってかれたと気づいたが二日酔いでふらふらする。掛け布団を腰に巻いて女将さんのところにいくと、掛け布団をひったくられて汚ねえから巻くんじゃねえと言われた。それから下女が呼ばれて裸の俺を通りに蹴り出しよった。

伊勢のここいらで悪行をしやがってといいつ、ともかく伊勢参りをした。
そこに侍がいて
どうした小僧、出の良さそうな顔して如何でここに裸でいるんじゃというから水戸を出て以来の始末を話したら気に入られた。
ともかく江戸だか水戸だかにけぇれ、それまで面倒をみてやるからってんで、それに甘えた。

そんで大坂でちょいと仕事をして帰った。船で帰った。外洋船に乗ったのは実を言うと若返る前も含めてこれが初めてだ。
この船で考えたのが船中八策よ。